「立体公園アイデア募集」最優秀賞が決定しました。

「立体都市公園アイデア募集」につきましては、多くの方に参加いただきありがとうございました。最終的には96作品の応募がありました。12月21日(金)に厳正な審査を行いました。審査経過及び結果は以下のとおりです。

1.審査経過
①審査準備 
審査員は(ー社)ランドスケープコンサルタンツ協会九州支部幹事の5名で行いました。
公平を期するために監査委員を設け、幹事以外の会員にお願いしました。監査委員によって、作品の開封と同時に作品の裏側に番号をつけさせていただき、作者の情報を一切省きました。審査員及び監査は以下のとおりです。

審査員
  (ー社)ランドスケープコンサルタンツ協会九州支部幹事
   ■支部長  中村久二  ※審査委員長
   ■代表幹事 武林晃司       
   ■幹事   大杉哲哉
   ■幹事   藤井伴彦  
   ■幹事   畠山義久(代理 村武賢治)     
監査委員 
   ■会員   佐藤宣之
   ■会員   中村哲也

②一次選考 
96の作品を審査員全員で協議し、「立体公園の主旨の活用」「斬新性」「実現性」等の観点から、優れていると思われる25作品を抽出しました。

③2次選考
まず、各審査員が優れていると考えられる5点ずつを抽出しました。1人以上の審査員が選んだ作品14点を3次候補作品として選定しました。それぞれの作品について全員で評価し、3次選考の作品として5点に絞りました。

③3次選考
審査員全員で先の「立体公園の主旨の活用」「斬新性」「実現性」を基本にして協議し、最優秀作品を選定しました。


2.総評 
 立体公園のアイディアを募集した所、96の作品の応募がありました、海外からも3作の応募もあり、主催者としても、感謝しております。提案はいずれも力作ばかりで、上位に選ばれた中以外にもベストに入れてもおかしくないものがありました。最終的に上位に選ばれたのは、都市の中に立体公園を創る事により、日本の都市のパブリックが新たな可能性を持つ案となりました。力作ばかりで、他の方にも賞をあげるべきでしたか、応募の規定に従い、一提案とさせていただきました、応募していただいた皆様、大変ありがとうございました。

3.審査結果
 審査の結果選定された最優秀作品及び2次、3次選考作品は以下のとおりです。

■最優秀作品
 「Parasitic Park」

●講評
 寄生する公園 という風に訳すべきか、この案は、既存の公園を立体的に創り周辺の建物と繋ぐ事により、ハプリックのスペースをネットワークする事の提案である。法的な問題やクリアーすべき課題は残るものの、都市の中のオープンスベースを公園を立体化する事により繋げて行こうというアイデアは、民間が所有していた土地の上に、都市計画法の網をかけた、日本の土地所有と都市計画法の経緯に対し、一つの可能性を提案している。アメリカや新しく計画される都市は、パブリックの場が都市の中心に配置され、パブリックスペース(プラザ・公園等)を中心に都市が構成されている。いわば都市の中において必要な場所にオープンスペースが適切に配置されている為多くの人が利用する公共の場が多い。一方、日本では、都市の必要な場所にパブリックスペースが確保しにくかった事もあり、公園は、公共用地の残置や、税法によって生まれた土地等、少しかわいそうな立地に配置されている。本提案をヒントに、公園から最も人が集まる建物へパブリックスベースが繋がる事が出来れば、必要な場所にパブリックが生まれ、都市のオープンスベースのネットワークが創出されるであろう。本提案を一位に選ばれたのは、上記のコンセプトが入っている事に加えプレゼンテーションの緻密さ、模型やCG。スケッチ等を使っての案の表現等が優れている事である。強いて言えば、人々が楽しんで活用する為の、飲食空間・商業空間、さらには交通システムの繋がりまでをコンセプトに表現出来ていれば申し分なかった。

■3次選考作品(4点)
「いえ←→こうえん」 

●講評
 住居の近くに公園を配置する目的で建物同士の隙間や屋上を利用して公園にするアイデアやその手法を実現させる都市計画制度の提案などが高く評価されました。そのプロセスをわかりやすく説明しているプレゼンテーションも高く評価され、最優秀作品と最後まで競いました。しかし、提案されたプログラムには、既存建物の改築、各住戸のプライバシー、都市計画制度などに多くの問題があり、実現性を危惧する意見も多く最優秀には至りませんでした。

「コウエンビル」

●講評
 古いオフィスビルを立体公園として活用する点と、公園の機能を縦に配置する斬新なアイデアが評価できます。作品としてのまとめ方やインパクトも高い評価でした。既存の公園や未利用地の活用、商業施設等の連携が加えられていれば、もっと高い評価ができた作品です。

「VOID PARKS」

●講評
 平面的にも、立体的にもパブリックスペース繋がりを、既存の建物の空き空間を活用して創出しようという提案である。火災時の延焼防止等のメリットに加えいくつかのポイントも押さえてある。ビルの再生の一つのあり方として、提案は非常に優れたものである。最終選考に選ばれなかったのは、既存の建物に対して中間層に植物を管理する事との難しさや建物加重・防水等の現実可能であるが、かなりのコストがかかる提案になっている事とが他の上位案と比較した時にネックになった。基本的なアイディアは優れており、ケン・ヤーンに代表されるスパイラルグリーンの建物でも実現可能な訳であるので、この提案は確かなものであるに違いない。

「商店街のアーケードを公園にしよう!」

●講評
 中心市街地の商店街ではアーケードの存続が大きな問題となっています。その中でアーケードの上を公園化することにより、緑を増やし人が集まる場所を創造していくことは商店街の活性化や都市の緑化からもおもしろい提案だと思います。ただ、アーケードの上の公園化だけでなく、隣接する施設との2・3階部のつながりやポケットスペースの活用など商店街全体とのつながりや広がりの提案があればよかったと思います。

■3次選考候補作品(9点)
「雑居公園ビル」

●講評
 この提案は、現実可能な提案として評価が高かった。都市の中の建物を公園とホール・レストラン・カフェに加え管理室まで計画されている。構造や避難路まで法的にクリアーしており、提案者の技量と努力には敬意をはらいたい。また、植栽の配置や樹木の選択においても樹種や高木・低木等も適切な選定がなされており、クライアントが見つかり、法的調整が出来たらこのままでも、新しい立体公園ビルとして現実のものになる精度を持っている優れた提案である。一位に選ばれなかったのは、残念ながら建物だけで完結している立体公園として基本コンセプトが考えられている事であった。都市への平面的な繋がりがこの提案の中に含まれていたとしたら一位案と大きく競り合っていたであろう。

「Urban Garden」

●講評
 光や水、緑や風といった自然的要素を用いた希少な応募作品でした。特に、貯水した水を生かすという発想は高く評価できると思います。実現性やネットワークについてもう少し検討が加えられていれば、さらに評価された作品です。

「PP構想」

●講評
 地球温暖化の要員であるCO2と都市に不可欠な車の駐車場を公園化して緑によってCO2を減らそうとするアイデアが評価できます。屋上や壁面を緑化する手法はある程度普及しつつあり、隣接する商業施設やオフィスとの接続についての提案等があれば、さらに評価された作品です。

「ON THE RAILROAD」

●講評
 都市全体に着目して、鉄道の上部を公園化し広域的な緑のネットワークをつくる提案は都市環境を捉えたダイナミックな提案として評価されます。一部に市民農園への活用などの動きも出てきていますが立体都市公園制度の活用だけでは実現が難しい提案です。また鉄道沿線だけでなく、道路や河川などの公共空間や沿線の施設などの提案があればよかったと思います。

「Bicycle+PARK」

●講評
 立体公園制度を活かして、駐輪場、交番、カフェなど新たな施設を導入するアイデアは、非常に実現性があり、既存公園の改修などにすぐにでも活かされる点で評価を受けました。また、地下を駐輪場にすることで表面に出てくる段差や吸気設備もステージやベンチなどの公園施設に利用するアイデアも評価できます。しかし、既に同様な計画が実際に進められているプロジェクトもあり、斬新性において他の作品の方が優れていると判断されました。

「Urban Green Networks」

●講評
 立体公園を単なる点ではなく壁面緑化や屋上緑化などと組み合わせて、都市の「立体緑のネットワークづくり」 へと展開している発想は高い評価を受けました。プレゼンテーションの質も高く、わかりやすくまとめてある点も評価されました。しかし、緑化としての立体公園だけではなく、パブリックスペースとしての具体的な提案が加味されていればさらに高い評価を受けたものと考えます。

「環状線上の立体公園」

●講評
 全応募作品の中で最もスケールの大きな作品でした。周辺のビルから山手線上へのアクセスも、屋上緑化という創造された緑が有効に活用されていると思います。民間のビル(企業)が事業に積極的に参加してくることが目に見えるようです。アメリカでは実際にハイウェイ上を立体公園にしようとする動きもあるようです。夢のある作品ですが、審査基準である「実現性」の視点から、最終審査に進むことが出来ませんでした。

「コロニー緑地公園構想ビル」

●講評
 作品には、整備目標年度、法制度、建設手法、エネルギー対策、さらに参考文献の提示に至るまで実現に向け具体的に多角面からの提案がありました。「立体」と言う言葉の定義を縦と横の線に加えネットワークによる広がりと捉えられたことが大きく評価されました。規模の大小を問わなければ現実的な提案であると思います。ただし、この作品の重要なポイントであるネットワーク部の提案がもう一押し必要であったと思います。

「ミドリレイヤー」

●講評
 全応募作品の中で唯一、限られた空間での緑の演出手法が提案されました。提案内容を応用することにより、都市の中の限られた空間の、必要とされる場所に公園(緑)を配置することができ、立体公園の定義に沿った緑空間整備の実現が可能であると考えます。さらに、インテリアグリーンとしてよりパブリックな場所への整備を行うことにより、民間の参加を推進させることが可能であり、このことにより線的な繋がりや広がりも持たせることが出来るでしょう。しかしながらこの作品は、緑の見せ方に力点が置かれてしまっているように思われます。緑を見せるための動線計画でなく、動線に対する緑の見せ方を提案されるべきであったと思います。

2020年11月11日 CLA九州